全光線透過率とヘイズの違い 光学樹脂の透明性の見方

基礎知識

全光線透過率とヘイズの違い 光学樹脂の透明性の見方

透明な材料のカタログには「全光線透過率」と「ヘイズ」という2つの数値が併記されます。両者はいずれも透明性を表す指標ですが、意味するところは異なります。透過率が同一であっても、ヘイズの値が異なれば見え方は別物になります。両者の違いから規格・測定・数値・設計上の解釈までを整理します。

📌 3行でわかる要約

  • 全光線透過率=通り抜けた光の量ヘイズ=そのうち散乱した成分の割合
  • 規格は別個に規定されます。全光線透過率は JIS K 7361-1:1997、ヘイズは JIS K 7136:2000
  • 100%に達しない分は表面反射・吸収・散乱に起因します。板厚を伴わない数値は比較の対象になりません

光透過率とは 全光線透過率とヘイズの違い

光透過率は「光がどれだけ通るか」の総称

光透過率とは、入射光のうちどれだけが通過したかを示す割合の総称です。眼鏡やカーフィルムでは「可視光線透過率」、樹脂の物性表では「全光線透過率」が用いられます。

全光線透過率は通り抜けた光の総量

全光線透過率とは、試料に垂直入射させた光のうち透過した光の総量が入射光に占める割合です。直進透過光と拡散透過光の和として定義されます(JIS K 7361-1:1997)。

ヘイズは白っぽいくもりの度合い

ヘイズとは、透明な媒体を透過した像が白濁して見える度合いを数値化したもので、曇り度とも呼ばれます。

定義上は、拡散透過率を全光線透過率で除した値の百分率として表されます。拡散透過光とは、入射光の進行方向から0.044rad(2.5度)以上偏向して前方に散乱した光を指します(JIS K 7136:2000)。

4つの指標の関係

  • 全光線透過率 … 直進透過光と拡散透過光の和
  • 平行光線透過率 … 直進透過光のみ
  • 拡散透過率 … 拡散透過光のみ
  • ヘイズ … 全光線透過率に占める拡散透過率の割合(%)

したがって、全光線透過率が同一の90%であっても、ヘイズが0.3%と3%とでは見え方が大きく異なります。前者は明瞭な透過像を、後者は白濁した透過像を呈します。


全光線透過率とヘイズの測定方法と規格

2つは別の規格で測る

同一の装置で測定する場合でも、根拠となる規格は異なります。

指標JIS対応ISO適用範囲
全光線透過率JIS K 7361-1:1997ISO 13468-1:1996 準拠透明でほぼ無色。厚さ10mm以下。蛍光物質を含むものは対象外
ヘイズJIS K 7136:2000ISO 14782:1999 準拠透明でほぼ無色。ヘイズ値が40%以下のもの

出典:JIS K 7361-1:1997JIS K 7136:2000

かつては JIS K 7105 が両指標を包括的に規定していましたが、同規格は廃止され、現行はそれぞれ独立した規格として運用されています(日本電色工業)。ISO側も改訂を経ており、現行は ISO 13468-1:2019 および ISO 14782:2021 です。規格の同定にあたっては、年号まで含めて参照する必要があります。

積分球とヘイズメーターで測る

拡散した光まで捕捉するには、内面を白色とした球体(積分球)に試験片を密着させます。球内面での多重反射により光を積分してから受光素子に導くため、散乱光も取りこぼしません(島津製作所)。

測定装置はヘイズメーターと呼ばれ、4つの指標を一括で測定できます。試験片はφ50〜60mmの円形が望ましく、最低3枚を測定します(JIS K 7361-1:1997)。

測定値を比べるときの3つの注意

  • 板厚をそろえる … 厚みが増すほど吸収・散乱が増大するため、板厚を伴わない数値は比較できません
  • 規格をそろえる … 廃止された JIS K 7105 と現行規格とでは値に乖離が生じます
  • 装置差を意識する … 現行規格は「補償開口」により積分球の効率変化を補正しています(日本電色工業)

主要材料の全光線透過率とヘイズ

一覧表で見る主要材料

板厚および試験規格が確認できた公式値のみを掲載します。

材料(製品例)全光線透過率ヘイズ屈折率 nd板厚試験規格
PMMA93%0.3%1.493mmJIS K7361-1/JIS K7136
PC・フィルム90.3%1.5850.25mmISO 13468-1
PC・シート90%以上1.0%未満2.0mmISO 13468-1/ISO 14782
COP92%1.535〜1.536記載なし記載なし
PS1.590〜1.600
ガラス(フロート板ガラス)約1.52
特殊PC(ユピゼータ®EP)1.616〜1.671

出典:三菱ケミカル アクリペット/帝人 パンライト光学グレード/日本ゼオン ZEONEX・ZEONOR三菱エンジニアリングプラスチックス ユーピロン・ノバレックス物性編板ガラスの一般的性質ユピゼータ®EP 製品情報

表を読むときの注意

  • 板厚と試験規格が材料間で統一されていません。厳密な横並び比較は成立しません
  • 「−」は公表値が確認できなかった項目です。屈折率の測定規格は JIS K 7142/ISO 489です

種類別の比較はこちらの記事もご参照ください。


透過率が100%にならない3つの理由

表面反射 入口と出口で必ず一部が跳ね返る

光は屈折率の異なる境界面で一部が反射します。これをフレネル反射といいます。濁りや吸収を伴わない材料であっても、透過率は100%には達しません。屈折率約1.5のガラスでは片面で約4%、両面で約8%が反射します(島津製作所板ガラスの一般的性質)。

一般に、屈折率が高い材料ほど表面反射は増大します。コーティングを施さない状態での透過率の理論上限も、屈折率が高いほど低くなります。これは材料の濁りに起因するものではありません。

この反射損失は反射防止(AR)コートにより大きく低減できます(島津製作所)。したがって光学設計では、素材単体ではなくコート後の光学系の透過率で評価します。

吸収 分子構造によって特定の色が吸われる

吸収とは、分子構造に由来して特定波長の光が吸収される現象です。短波長側(青色域)が選択的に吸収されると、透過光はわずかに黄色を帯びます。

散乱 光学的な異物にぶつかって光が散る

散乱とは、屈折率の異なる光学的異物に光が入射し、進行方向を変える現象です。材料内部の異物・気泡・結晶粒、あるいは表面の凹凸が原因となります。吸収を伴わなくても白濁して見え、ヘイズはこの散乱成分を測定するものです。

なお ISO 14782 には、摩耗面やつや消し面ではヘイズが真値より低く算出される旨の注記があります。


光学設計の実務で透過率をどう見るか

内部透過率と全光線透過率は別の量

光学ガラスのカタログ値は、表面反射を除外した「内部透過率」として記載されます(HOYA)。一方、樹脂の「全光線透過率」は表面反射を含みます。両者を並列に比較し「ガラスの方が透明である」と論じることは、定義の異なる数値同士の比較にほかなりません。素材固有の性質を比較する場合は内部透過率、部品としての光量を評価する場合は全光線透過率を用いるべきです。

透過率はレンズ1枚ではなく光学系で効く

レンズは複数枚を重ねて構成されます。1枚につき2面を有するため、反射による損失は面数に応じて累積します。反射光は迷光となり、ゴーストやフレアの原因ともなります。

ヘイズは成形と使用環境で悪化する

材料単体のヘイズが低くても、部品として成形した後に悪化することがあります。要因は、成形時の樹脂分解に起因する銀条(シルバーストリーク)、金型・離型の状態、耐熱性不足による変形などです。

関連指標については以下の各記事で詳しく解説しています。

熱分解とはガラス転移温度Tgとは

透過率とヘイズだけでは画質は決まらない

透過率は明るさに、ヘイズはコントラストの低下に影響します。これらに加え、複屈折も画質を左右する要因です。複屈折とは、光線が異方性のある物質を透過するときに、偏光方向によって2つの屈折光に分かれる現象です。像のにじみに加え、二重像や干渉縞として現れますが、透過率にもヘイズにも表れません。色のにじみ方にはアッベ数も関与します。

複屈折/アッベ数については以下の各記事でも解説しています。

複屈折とはアッベ数とは


光学用途の特殊ポリカーボネート ユピゼータ®EP

光学用途に向けて透明性を追求した特殊PC

三菱ガス化学のユピゼータ®EPは、光学用途に向けて開発された光学材料で、主に特殊ポリカーボネート樹脂で構成されます。特長は高屈折率・低複屈折・高耐熱で、コーポレートサイトでは高透明性と高加工性も挙げられています。200種類以上のモノマーの組み合わせから、要求特性に応じたカスタマイズも可能です。

ユピゼータ®EPの詳細情報については以下をご確認ください。

ユピゼータ®EPMGC 製品情報

特長と想定用途

一般的なPCの屈折率1.58に対し、1.616〜1.671の帯域にあります。アッベ数は19.2〜25.8、ガラス転移温度Tgは140〜145℃です。想定用途はスマートフォンカメラ、AR・VRデバイス、車載カメラ、HUDなどです。

なお、全光線透過率とヘイズの実測値は非公表です。

関連指標については以下の各ページで詳しく解説しています。

最新開発動向:高屈折ユピゼータ®EP 製品情報


まとめ

数字の読み方の押さえどころ

全光線透過率は光の量、ヘイズは光の散乱の度合いを示す指標です。100%に達しない分は表面反射・吸収・散乱に分かれます。数値を比較するには板厚と規格を統一することが前提となります。光学用途では、コート後の光学系としての透過率で判断してください。

ユピゼータ®EPについて

ユピゼータ®EPは三菱ガス化学の光学用特殊ポリカーボネート樹脂です。屈折率1.616〜1.671、アッベ数19.2〜25.8、Tg 140〜145℃のグレードがあります。

詳細データやサンプル、グレード選定のご相談は、公式サイトのお問い合わせフォームより承ります。

ユピゼータ®EP(Iupizeta EP)公式サイト


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