基礎知識
シリコンフォトニクスとは?光通信を支える技術の基本
📌 3行でわかる要約
- シリコンフォトニクスは、半導体の製造プロセス(CMOSプロセス)を使ってシリコン基板の上に光の回路を作り込む技術です。
- データセンターの光通信やLiDAR(光を使った距離センサー)など、幅広い分野で採用が広がっています。
- チップの中の技術だけでなく、チップの外側を構成する部材(ハウジングなど)の材料選定も、実装の完成度を左右する重要なポイントです。
シリコンフォトニクスとは
シリコンフォトニクスとは、半導体チップの製造に使われるCMOSプロセス(集積回路を作る際の標準的な製造技術)を応用して、シリコン基板の上に光を通す回路(光導波路)や、光を電気信号に変換する部品を一体的に作り込む技術です。従来、光通信用の部品は個別に作られた光学部品を組み合わせて作られてきましたが、シリコンフォトニクスでは電子回路と同じ製造ラインで光回路を量産できるため、微細化・集積化がしやすくなります。
この技術がいま注目されているのは、既存の半導体製造インフラ(設備・プロセス)を転用できるためです。新しい材料や専用ラインをゼロから作る必要が薄く、量産時のコスト効率という点でメリットがあるとされています。
仕組み:光を導波路に閉じ込める原理
屈折率差による光閉じ込め
シリコンフォトニクスの中核となるのが「光導波路」です。これは光ファイバーを基板上に小さく再現したような構造で、光を通す芯の部分(コア)と、それを取り囲む部分(クラッド)の屈折率(光の曲がりやすさを表す指標)の差を利用して、光を一定の経路に閉じ込めます。
シリコン(Si)の屈折率は波長1.55μm(1550nm)で約3.45、クラッドに使われる二酸化シリコン(SiO₂、石英ガラスの主成分)の屈折率は約1.45です。この差が非常に大きいため、コアとクラッドの境界で光が効率よく反射し、細い導波路の中に光を閉じ込めて伝えることができます。
通信波長帯(1310nm・1550nm帯)
光ファイバー通信では、1310nm帯・1550nm帯という特定の波長帯が使われます。これらは石英系の光ファイバーにおいて伝送時の損失(光が弱くなる度合い)が少ない「低損失窓」として、業界で広く知られている波長帯です。1550nm帯は損失がより少なく長距離伝送に有利とされ、1310nm帯は波形の広がり(分散)が小さいことから中距離用途で使われる傾向があります。
主要な構成デバイスと応用分野
光源・光導波路・変調器・受光器という基本構成
シリコンフォトニクスのチップは、大きく分けて次のような要素で構成されます。
- 光導波路:光を伝える経路そのもの
- 光変調器:電気信号を光の強弱や位相の変化に変換する部品
- 受光器(フォトディテクタ):光信号を電気信号に戻す部品
- 光源:レーザー光を発生させる部品(シリコン自体は発光効率が低いため、別の半導体材料と組み合わせることが一般的)
これらを一つの基板上に集積することで、電気信号と光信号を高速に変換する回路をコンパクトにまとめられます。
応用分野
代表的な応用分野が、データセンター内・データセンター間の光通信です。近年は「CPO(Co-Packaged Optics)」と呼ばれる実装方式が注目されています。これは、スイッチ用の半導体チップ(ASIC)と光信号を扱う光エンジンを、同一のパッケージ基板上に近接して配置する技術で、電気配線の距離を短くすることで消費電力や帯域幅の制約を緩和する狙いがあります。このほか、自動運転車などで使われるLiDAR(光を使った距離センサー)や、国内で研究が進む次世代の光電融合ネットワーク基盤への応用も期待されています。
実装上の課題:チップの中だけでは完結しない
結合効率・アライメント精度という技術的難所
シリコンフォトニクスの実用化にあたっては、チップの中の技術だけでなく、チップと光ファイバーをいかに高精度につなぐかという課題があります。特に、光ファイバーとチップ上の導波路を接続する際の「結合効率」(どれだけロスなく光を伝えられるか)や、位置合わせの精度(アライメント精度)は、複数の技術解説記事でも実装上の難所として指摘されています。
チップの外側を支える部材にも目を向ける
このような結合・位置決めを担っているのが、ファイバーを束ねて固定するFAU(ファイバアレイユニット、Fiber Array Unit=光ファイバーを高精度に並べて保持する部品)や、光エンジンを保護するハウジング、レンズを高精度に固定するマイクロレンズアレイ(微小なレンズを面状に並べた光学部品)の保持部材といった、チップの外側を構成する部材です。
これらは現状、石英ガラスやセラミックといった材料が中心に使われています。シリコンフォトニクスの技術解説記事の多くはチップ内部の回路技術に焦点を当てており、こうした周辺部材が実際にどのような材料で作られているか、という切り口で書かれた記事はあまり見当たりません。しかし、量産時のコストや軽量化を考える上では、チップの外側を構成する部材の材料選定も無視できないポイントです。特にCPO(Co-Packaged Optics)のように光エンジンを高密度に実装する方式が広がるほど、これらの部材にも小型・軽量化や量産性が求められる場面が増えていくと考えられます。
ユピゼータ®EPという選択肢
光学樹脂の分野では、屈折率(nd)と耐熱性(ガラス転移温度:Tg)のバランスが重要になります。三菱ガス化学の光学樹脂「ユピゼータ®EP」では、用途に応じた材料提案の一環として、より高耐熱な開発材の検討を進めています。
たとえば、以下のような物性を有する樹脂を開発しています。
開発材A:屈折率 nd=1.61、Tg=264℃
開発材B:屈折率 nd=1.63、Tg=280℃
いずれも光通信で広く用いられる 1310nm帯・1550nm帯において高い内部透過率を示し、光学部材としての基本性能を確保しながら、実装工程で課題になりやすい耐熱要求にも対応できる材料設計を狙っています。
さらに本開発材は、熱可塑性ポリイミド(TPI)やポリエーテルイミド(PEI)と比べて吸水による寸法変化が圧倒的に小さく、環境変動下でも位置決め精度や結合安定性を確保しやすい点が特長です。また、複屈折もTPI、PEIより格段に低く、偏波依存のばらつきや光学歪みを抑えたい用途に適しています。
想定用途としては、レンズ保持部材、光学部材の固定・一体化部品、ハウジング周辺の樹脂部材など、シリコンフォトニクス実装で「光学特性」と「実装耐熱」、そして「環境安定性」を同時に満たしたい領域が挙げられます。要求仕様に応じた適用可否や条件の詳細については、お気軽にお問い合わせください。
まとめ|シリコンフォトニクス時代の材料選定
CPOをはじめとする高密度な実装方式が広がる中、シリコンフォトニクスは、チップ内部の光回路技術としてだけでなく、それを支えるパッケージング部材の材料選定まで含めて考えることで、実装全体の完成度が見えてきます。ユピゼータ®EPのような光学樹脂も、その選択肢の一つになり得ると考えられます。
ユピゼータ®EPについての詳細は、ユピゼータ®EP公式サイトよりお問い合わせください。
一部の画像・文章に生成AIを活用してます